自動車部品製造における生産準備領域の情報見える化
~ 繋がる部品表がもたらすもの ~
株式会社東海理化電機製作所
情報システム部
部長
北川 力氏
2015 VISIONで「時代を先取り、世界から求められるグローバル企業集団」を目指す株式会社東海理化電機製作所(以下、東海理化)は、自動車部品製造の分野で世界展開を進めています。
新車開発期間の短縮に応じて、早い段階からの作り込みを進めるため、新製品の開発製造にかかわる情報システムの整備に着手。生産準備段階から情報を共有できる、部品表を核とした情報統合のシステム構築についてご紹介します。
生産準備分野の情報の一気通貫を目指して
消費者ニーズの多様化に対応した新車開発サイクルの短期化や製品の高度化・複雑化、製造拠点の海外展開など、さまざまな環境変化が急速に進む中で、東海理化の社内には、「いままでの仕事のやり方で、この先も乗り切れるのか」という危機感が生まれていました。それに対して情報システムは何ができるのか、検討を重ねた結果、新しいシステムが目指す「あるべき姿」として三つの項目が決定されました。
- 必要情報が盛り込まれた部品表(データベース)
- グローバルな情報共有による、拠点間での設計から生産・調達までの情報連携
- コンカレントな日程管理
当時の東海理化では、情報の収集や流通に時間をとられているのが実態でした。そこで、会社の根幹であるものづくりに集中するために、ITは何ができるのか。悩んでいた情報システム部の北川 力部長は「2003年のIBM インダストリアル・フォーラムの発表を聞いていて、貴重なヒントが得られました」と語ります。
こうして、情報の流通をITでカバーし、本来業務に集中できる環境づくりのために「生産準備分野の情報の一気通貫を目指す」というプロジェクトがスタートしたのです。
生産準備部品表で情報をデータベース化
新しいシステムには「ad@m(algorithm database @ manufacturing)」という愛称が付けられ、生産準備情報の統合を実現する三つの柱が設定されました。
- 製品や部品のすべての情報源となる「生産準備部品表」の構築
- 日程進ちょくの見える化
- 電子帳票による情報の再利用、承認フローの見える化
当時の仕事の進め方では、お客様である自動車メーカーから引き合いがあった場合、それに関する情報が社内の各部署に点在している状態で、タイムリーに利用することが非常に困難でした。さらに、それらの情報が技術部品表としていったん集約された後に仕様や日程の変更が入ると、体型的に管理されていないために、最新の情報が正確に反映された表の入手が困難で、それをサポートする部署もありませんでした。
そこで、新製品開発スタート時の仮部品リストの段階から生産準備部品表に情報を一元化し、それを量産化までつなげる。すなわち、情報の早出しとデータベース化による共有でリードタイム短縮を図る。それがad@mが実現すべき最大の機能となりました。
プロジェクトを推進する体制は、このシステムによって実際に利益を受ける部門である生産管理や技術管理、生技管理などの各部門長がリーダーとなり、ステアリング・コミッティー的な役割を果たしました。さらに東海理化としては初めて、外部のコンサルタントの活用を決め、日本IBMが企画段階から参加しました。
ad@mの基本的な考え方は、「後工程へのちょっとした思いやり」と表現されています。各部署が自分の仕事のために持っている情報をad@mに入力することによってみんなでシェアできるようになり、後工程の役に立つ。情報の再利用が進み、回りまわって自分に返ってくるというものです。
新製品開発のルールは従来から社内規定としてあるものの、実態はどうなのか。プロジェクトは、まずそこから始まりました。社内の帳票をすべて集めて、業務のフローとFit/Gap分析を実施。その結果を踏まえた上で、業務フローを標準化するために重点管理項目を決め、品質管理のマイルストーンを設ける仕組みを入れ込むことにしました。
このような経過で、外部設計までほぼ1年、実装や総合テストはスピードアップして2年で完了。要件定義の打ち合わせは45回を数え、900ページを超える要件定義書が作成されました。

図.ad@mの基本的な考え方とねらい
後工程の負荷を大幅に軽減
それまで、自動車メーカーで進行中の新型車開発の情報は、東海理化の営業部門が独自の車種情報システムに入れて利用していました。生産準備をする側はそれを随時参照し、あらためて自分たちのシステムに入力し直すという無駄な作業が生じていたのです。
ad@mはこの営業のシステムを取り込み、未確定部分が多い車種情報がある程度確定してきて後工程にリリースできるレベルになれば、リリース・フラグを立てます。この情報に対して常に変更が反映され、量産段階まで活用されるようになりました。
東海理化の日程管理は、まず自動車メーカーの日程が最優先となり、そこから社内での日程が決まっていきます。例えば納入日程が決まれば、その前に生産設備ができなくてはいけない、さらにその前には部品の金型ができていなくてはいけないといった具合です。しかし、どこかの段階で日程が変更になった場合、表計算ソフトを使って手作業で日程表を作っていると必ずしも迅速に反映できず、結果的に遅れが生じるといった実態がありました。ad@mでは、お客様の日程変更に対応するとともに、それを後工程へ通知し、後工程でしっかり精査するようになっています。
日程に関する情報は、営業や技術や生産管理など、お客様と接点のある社内のいろいろな部署が集めたものを、生産管理部門が集約して日程表を作成していました。しかも、この作業に手間がかかるため、カバーできるのは重点車種のみ。これを改善して、情報は最終的に営業が集約し、責任を持ってad@mに入力するようにしました。また、すべての車種をカバーすることを目標としています。
さらにきめ細かな管理を可能にする仕組みとして、車種別受注製品確認表を作成。受注できたか、できなかったか、従来品を継続使用するかどうかの情報は、生産準備の負荷に大きな影響を与えるため、後工程にとっては非常に重要です。車種別受注製品確認表で現行の車に装着されている東海理化の製品を車種別に見られるので、モデル・チェンジによって新しく作るのか、継続されるのか、引き合いがあったか、いつ確定するかという情報を品番別に確認することができます。
未確定の情報も参考にして、リードタイムの短縮へ
新製品の仕様が固まってくると、設計作業が始まります。新しい技術や材料、工程などが必要かどうかといった製品情報が盛り込まれた製品設計企画書は、生産技術や工務部門がなるべく早く見たいものですが、未確定要素が含まれるために設計からはなかなか出してもらえませんでした。これをad@mでは、ドラフトの状態でも後工程から見ることができるようにしました。あくまでもドラフトとして参考にして、確定すればリリース・フラグを立て、生産技術の対応や内外製の決定が進行し、リードタイムの短縮に結びつけていきます。
一方では、設計図ができあがってから製造地や内外製を決定するのではなく、いまや製造・品質要件を設計に反映させるためには出図前に製造部門の要件が必要で、製造地や内外製をどうするかが重要な要因の一つであるため、設計部門にとってもそれらを早期に決めてもらう必要があります。従って、情報をワークフロー化して共有すれば、並行して検討や作業ができる部分はスピードアップできるし、進ちょく状況もすべてわかるようになるわけです。
また、車種別の日程管理を集約した、工場別や製品グループ別の日程管理も重要です。しかし、従来は情報を人手で集約して表計算ソフトで作成していたため、非常に大きな帳票となり、A1サイズに出力しても判読できないほどでした。これも、ad@mによって容易に管理できるようになりました。
ad@mのシステム構成は、サーバーとしてIBM System p(TM)シリーズを採用。クラステクノロジーの総合製造ソリューションECObjects/TotalBOMの上にJavaでプログラムを実装しました。
北川部長は「ad@mでやろうとしたことは、システム的には実現できたが、運用は始まったばかり。本当に成果が問われるのは、生産準備から量産立ち上がりまですべてad@mでやって、その時の仕事の流れがどうだったか検証した時でしょう」と語ります。
東海理化では、既に海外の子会社間での製品供給が始まっており、さらに増える可能性があります。また、自動車メーカーでも国内工場と海外の同時立ち上げや、海外工場だけで立ち上げるケースも出てきました。これに対応するために、ad@mがカバーする領域の拡大が今後も進んでいくことでしょう。

図.内外製決定情報の早出し共有
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IBMインダストリアルフォーラム 2008 実施報告
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